悪女が後押ししてくれる人生もある

忘れられない幾つかの小説あります。何年も前に読んだものから最近出会った作品まで、それらの物語は私の心の中で色褪せずに存在し続けています。
ここ最近特に思いを巡らしているのは、ある推理小説です。名前や職業を変えて罪から逃れながら生きる主人公の女性と彼女を追う刑事、彼らを取り巻く者達からなる壮絶な物語は私を圧巻させ、今もなお魅了し続けているのです。そこまで強く心にあり続ける理由は、主人公の行動力です。悪事を重ねながらも自らの意志のままに生きて、男性を虜にする彼女はとても美しい悪魔です。しかし己の目的の明確さと行動を起こす力はカリスマ的でもあり、憧れさえ抱かせます。こうした主人公への思いが沸々と私の中に起こるとき、何かに怖じ気づいていて前に進むことができない自分の状況を知るのです。もしくは決断していても、一歩踏み出る勇気が湧かない場合もあります。
ちょっとした躊躇は心を弱めてしまいますが、ここから飛び出したいという強い願いが状況を好転させてゆくことを学んできました。その心の変動には小説の世界でとてつもない魅力を醸し出してきた罪深き悪女が、一役買ってくれることを何度となく経験してきました。
どんな時も目標に向けて一目散に生きることは難しいものですが、遠回りをしながらも目的に辿り着くことができればとそれでよしと思っています。悪いことはしてはいけませんが、強き野望を持つ文学作品のヒロイン達から学ぶものがある事は嬉しいことです。こうしたことから文学に出会うことは、生きてゆく上で重要なことを知ることでもあるのだと思うのでした。

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