品のある女の色気に昭和は良く似合う

昭和を描いた小説を読んでいると心が和みます。そんな風に感じるようになったのは、年を重ねた証拠からもしれません。私の中では昭和とは古き良き時代で、どこか懐かしくて小説に登場する者達は苦楽を味わいながらも人情深いのが特徴です。そんなことを抱くのは私自身がこうした物語を積極的に読んできたからかもしれません。
先日読んだ小説はそんな味わい深さが凝縮された作品でした。放浪癖が消えない父は主人公の10代の女性とは別のところに住んでいます。そこへ母に頼まれてお金を持ってゆくことになったことから物語は始まります。芸者小屋や名画座などが立ち並ぶ町に住む父の元へ辿り着き、ドアを叩いたら知らない若い女が出てきました。その人は父の同棲相手ですが、とても手厚い歓迎を受けます。しかしながら当の父は嬉しい気持ちを上手く表現できずに、せっかく再会したにも関わらずその家から出て行ってしまうのです。一度は家路に着こうとしたものの、夜遅くまでその女性と供に今まで味わったことのない時を過ごします。女性の上品な色っぽさと美しい絵柄の皿に乗せられた水菓子、隣の家から聴こえる三味線の音など今まで知らなかった大人の世界を知ります。
この作品を読んでいると私もこんな色気と魅力あふれる出会いをし、粋な時間を過ごしてみたいと感じました。親との複雑な関係は心痛むところもありますが、10代の若者にとってこの出会いはとても大きなものになったと思います。そして昭和というスパイスはより一層小説の魅力を掻き立てたのでした。

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