また食したい老舗甘味処の粟ぜんざい

ある初冬の週末に由緒溢れる街にある甘味処を訪れました。昔から文豪達にも愛されてきた店で、一度はここの和菓子を食べたいと思っておりました。立ち寄ったのはたしか金曜日の夕方だったと記憶しております。老若男女問わず様々な年齢層の人々が、ぜんざいやあんみつを食べていたことが思い出されます。私は冬季限定の粟ぜんざいをお持ち帰りで購入して家路に着いたのでした。レンジで温めて夕飯のデザートとしていただいたところ、大変美味しくてとても幸せな気分になったことを覚えています。粟のもっちりとした食感と、甘すぎずでも濃厚なこしあんは外の寒さを忘れさせてくれるように体を暖めてくれました。
なぜ今この店のことを思い出したかというと、先日読んだ短編小説に登場していたからです。昭和を舞台にした作品に、あの店のあんみつが奥深い趣を与えていました。今までこの作品の著者が手掛ける小説を幾つか読んできましたが、どれも粋で大人の色気を感じるものが多く、まだまだ未熟者の私はいつも「こんな生き方があるのか」といい勉強をさせていただいております。そのため勝手ながら著者へ心からの憧れを抱いているのです。また足を運んだことがある店が小説に登場することで、作品がより身近に感じられるのも嬉しいものです。そしてあの初冬に食べた粟ぜんざいが恋しくなり、今無性に欲しております。
いつかまた粟ぜんざいに再会することができる日を胸に、これからもたくさんの小説を読んでいきたいと思います。同時に美味しいものを貪欲に追及していこうとささやかな欲望を抱いているのでした。

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