温かな余韻が残る濃厚な小説を読んで

昨晩長編小説を読み終えました。とても読み応えがあり心に響く素敵な作品だったため、今も温かい余韻に浸っています。
この作品はある男性が、数年前に交通事故で亡くなった子供と父親が乗る車で夜のドライブをしながら半生を振り返るお話です。確執があり分かり合えずにいた危篤の父も便乗しドライブは楽しくも切なく、逃げたいほどに辛い過去をやり直しながら進んでゆきます。仕事も家族関係も上手くゆかずにこの世から去りたいと願う主人公が少しずつ前向きになっていく姿からは、ささやかな希望を抱かせてくれました。
誰しも人生の分岐点がありその頃に戻りやり直しが出来るのであれば、現実は変わっているのではないかと思うこともあるのではないでしょうか。主人公は分れ道に戻りながらも、その後どんなことが起こるか知っているため戸惑いながら変わらない未来を知りつつも立ち向かいます。そこには未来を変えたいと願う気持ちと自らを変えたいという大きな意志があったように感じます。
時々1年後の今を知りたいという思いに駆られることがあります。そんな気持ちを胸に秘めつつも未来は分からないから面白いのであり、過去に戻れないからこそ今を生きる意味があると感じます。この作品から知った生きる事のもどかしさと素晴らしさは、今の私の気持ちに栄養を与えてくれました。またいつかこの小説を読み返す時がきたならば、登場人物と供に夜のドライブを楽しみたいと思います。

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